2019年4月27日から公開されていた、ジャズピアニストのビル・エヴァンスのドキュメンタリー映画である「タイム・リメンバード」を観てきました。
最近、ジャズを好んで聴く機会が増えてきたタイミングでちょうどやっていた映画だったので、ジャズや音楽の勉強も兼ねて映画館に行きました。
ビル・エヴァンスは、アメリカのジャズ・ピアニスト。
モダン・ジャズを代表するピアニストとして知られ、ドビュッシー、ラヴェルなどのクラッシックに影響を受けた印象主義的な和音、スタンダード楽曲を題材とした創意に富んだアレンジと優美なピアノ・タッチ、いち早く取り入れたインター・プレイといった演奏は、ハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットなど多くのピアニストたちに多大な影響を与えたほか、ジョン・マクラフリンといった他楽器のプレイヤーにも影響を与えている。
ジャズ系のピアニストとしては、先駆者的な存在であり、センスあるコード感ととても美しい旋律を奏でるミュージシャンの一人です。
映画を観た感想!
映画を観た感想は、本当に波乱万丈な人生を送った人だなと率直に思いました。
1950年代から70年代にかけて活躍したジャズ系のミュージシャンのほとんどが、ドラッグをやっていて薬物依存から悲惨な人生を送ってしまう方が多い時代背景でしたが、ビル・エヴァンスの人生もまさにそんな感じでした。
当時のニューヨーク周辺の音楽シーンの雰囲気は少し想像できませんが、恐らく今ほど規制もなく薬物が蔓延していたように思います。
ジャズは、一瞬の閃きだったりアドリブプレイを多用する音楽スタイルなので、プレイヤーの人たちも緊張感とは常に隣合わせの関係性です。
良い演奏をするためにプレッシャーを払いのける手段として、ドラッグとお酒は都合が良かったと回想していましたが、それが彼の健康状態を徐々に蝕んでいきました。
音楽の才能があったのにもったいないとしか言えません。
大切な人たちが次々と亡くなってしまう人間模様!
ビル・エヴァンスの演奏は、甘美で美しく心地よい音楽を奏でますが、とくに後期では孤独感や切なさや人を寄せ付けないような壮言な雰囲気も伝わってきます。
その背景には、大切なバンドメンバーの死や、恋人や実の兄が自殺をしてしまうなど、大切な人たちがいなくなってしまう寂しさ・喪失感を何度も味わう経験をしています。
一時は断っていた薬物をまた再開してしまったのもそういった疎外感を一瞬でも忘れたかったと思いますし、彼自身も死ぬことを望んでいたようです。
直接的には「自殺」はしなかったですが、長年のドラッグと飲酒により、「時間をかけた自殺」と言われる所以もわかる気がします。(享年51歳)
ビル・エヴァンスが遺したもの!
もちろん彼が今までに作った作品は永久に残りますが、それ以外にもピアニストたちに多大な影響を与えました。
とくに複雑なハーモニーの発展の仕方などは、ジャズや音楽理論などの良き教材としても功績を残しています。
「光と影」が多いミュージシャンでしたが、ある意味それがより一層芸術の域を高めたと思います。
やはり彼の音楽は、夜にしっとりと聴くのが合います。