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バンドが終わっても、音楽は終わらなかった。トロントで気づいた「好き」という感覚

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トロントへ行く前の僕にとって、音楽は生活の一部というより、ほとんどすべてに近い存在でした。

中学生の頃にギターを始めて、音楽の専門学校へ進み、その後はバンド活動に夢中になった。

生活の中心には、いつも音楽がありました。

ところが、そのバンドが解散します。

それまで自分の土台になっていたものが、ひとつ終わった。

そして僕は日本を離れ、カナダのトロントで暮らし始めました。

不思議なことに、トロントへ渡ってすぐの頃は、音楽からかなり離れていました。

むしろ一度、離れた方がいいと思っていたのかもしれません。

英語を勉強すること。

知らない街で生活すること。

今までとはまったく違う環境に身を置くこと。

そういうことに意識が向いていて、ギターやバンドのことを考える時間は自然と減っていきました。

音楽から離れても、意外と平気だった

ずっと生活の中心だった音楽から離れたら、心に大きな穴でも開くのではないか。

今振り返れば、そんなふうにも思えます。

でも実際は、意外と平気でした。

日本からカナダへ渡り、知らない土地で新しい生活を始める。

それ自体が僕にとって、とても刺激的だったからです。

  • 街も違う。
  • 言葉も違う。
  • 出会う人も違う。
  • 毎日のように知らないことが出てくる。

新しい生活そのものが新鮮で、「音楽がなくて寂しい」と感じることはほとんどありませんでした。

日本が恋しくて仕方がない、というホームシックもほとんどなかったと思います。

僕にとってトロントでの生活は、過去を懐かしむというより、新しいものを吸収していく時間でした。

久しぶりに聴いたレニー・クラヴィッツ

そんな生活をしていても、結局また音楽と出会います。

トロントへ来てそれほど経っていない頃だったと思います。

レコード店かCDショップへ行って、いろいろな音楽を試聴していました。

そこで久しぶりに聴いたのが、レニー・クラヴィッツでした。

日本にいた頃から好きなアーティストではありました。

ただ、そのときは以前とは少し違って聴こえた。

  • ギターの音。(オーバードライブ)
  • ドラムの音。
  • ベースの音。

久しぶりにそういう音をまともに聴いたとき、妙に心に響いたんです。

「やっぱり音楽っていいな」

ものすごく単純ですが、そんな感覚でした。

「自分には音楽が必要なんだ」というほど大げさなものではありません。

ただ、自分はこういう音が、単純に好きなんだ。

それを改めて実感しました。

ずっと音楽の中にいると、好きであることさえ当たり前になってしまいます。

一度そこから離れたことで、自分の中にまだ残っていた「好き」という感覚が、逆にはっきり見えたのかもしれません。

トロントで、またギターを買った

そして結局、僕はトロントでもギターを買いました。

モデル名や店の名前は、もう覚えていません。

覚えているのは、メキシコ製のFenderだったこと。

そして、まだ寒さの残る時期だったことです。

楽器店へ行ったときの、久しぶりに楽器に囲まれた懐かしさと、少し興奮するような感覚は今でも残っています。

一緒に行ったのはベーシストの友人でした。

二人でいろいろ話しながら楽器を見て、ギターを選んでいった。

何を話したのかまでは、もう覚えていません。

でも、そうやって誰かと楽器を見ながら過ごした時間は、不思議と記憶に残っています。

日本を離れ、音楽からも少し距離を置いたはずなのに、気づけばまたギターを手にしている。

人間の「好き」というものは、案外そんなものなのかもしれません。

音楽があると、言葉を超えて人とつながれる

海外で音楽をやっていて面白かったのは、楽器がコミュニケーションのきっかけになることでした。

もちろん、ギターを弾けば言葉が必要なくなる、なんていう格好いい話ではありません。

でも、知らない人と話すときに、

  • 「ギターを弾いている」
  • 「どんな音楽が好き?」

そんな話から会話が始まることがあります。

英語が完璧でなくても、共通して好きなものが一つあるだけで話しやすくなる。

自己紹介のひとつにもなりました。

トロントでは、語学学校のイベントで演奏したり、ゴスペルの練習に参加してベースを弾いたりもしました。

トロントで現地の人たちと音楽をやったときのことは、以前「海外留学中に経験した音楽セッションでの1コマ!」という記事にも書いています。

海外留学中に経験した音楽セッションでの1コマ!

日本にいた頃とは、音楽との付き合い方が少しずつ変わっていったのだと思います。

日本人とは少し違った、音楽との向き合い方

海外で音楽に触れていると、日本との違いを感じることもありました。

僕の感覚では、日本人は良くも悪くも几帳面です。

  • 楽器の手入れをする。
  • 弦を交換する。
  • 本番に向けて練習する。
  • 準備の段階から、きっちりやろうとする。

一方、トロントで出会った人たちを見ていると、もっと自然体というか、「とりあえずやってみよう」という空気を感じることがありました。

もちろん、どちらが正しいという話ではありません。

むしろ僕自身、語学学校で人前に出て演奏したときには緊張していたので、彼らのようにもう少し肩の力を抜いて、

自然体でやれたらいいなと思ったこともあります。

ただ、同時に今でも大事だと思っていることがあります。

本番で出てくるのは、普段やっていること。

だから、リラックスすることと準備をしないことは違う。

肩の力は抜く。

でも、準備はする。

アマチュアであっても、人前に出るなら、そのくらいの意識は持っていたい。

海外での経験は、自分が日本で身につけてきた感覚をすべて捨てることではなく、違う価値観を知ったうえで、

自分が大切にしたいものを考える機会にもなりました。

Linkin Parkを観て感じた、会場全体の一体感

トロントでの音楽体験で、強烈に記憶に残っているものの一つが音楽フェスです。

そこで観たのが、Linkin ParkやStone Temple Pilotsでした。

チェスターベニントン

特に印象に残っているのは、Linkin Park。(チェスター・ベニントン)

僕もできるだけ前の方まで移動して観ていました。

そこで驚いたのが、周りの観客がとにかく歌うことでした。

代表曲だけではありません。

感覚としては、演奏される曲のかなりの部分を、周囲の人たちが一緒になって歌っている。

会場全体が大合唱のようになる。

僕自身も、その中で歌っていました。

好きな曲が流れて盛り上がるライブは、日本でももちろん経験しています。

でも、あれほど多くの曲を観客が一緒になって歌っている光景は、とても印象的でした。

ステージの上だけで音楽が鳴っているのではなく、観客も含めた会場全体で音楽を作っている。

そんな感覚がありました。

DJパーティーで流れた「Enter Sandman」

メタリカ

音楽はライブ会場だけにあったわけではありません。

あるDJパーティーでは、Metallicaの「Enter Sandman」が流れたこともありました。

海外へ行ったからといって、自分がまったく別の人間になるわけではない。

聴いてきた音楽も、好きなギターの音も、自分の中にそのまま残っている。

ただ、場所が変わると、その音楽との出会い方が変わります。

日本で何度も聴いていた曲が、トロントの街やそこで出会った人たちと結びつき、新しい記憶になっていく。

それも海外で暮らした面白さの一つでした。

好きなものは、好きなようにやればいい

今の自分が、あの頃の自分に音楽について何か一言伝えるなら、

「心の思うままに、好きなことは好きなようにやればいい」と言うと思います。

  • 環境は変わります。
  • 時代も変わります。

好きなものとの付き合い方だって、ずっと同じではありません。

毎日ギターを弾く時期もあれば、離れる時期もある。

夢中になることもあれば、別のことへ意識が向くこともある。

それでも、何かを見たり聴いたりしたときに心が動く。

「これが好きだ!」と感じる。

そういう感覚には、なるべく素直でいたいと思います。

感受性が豊かな方が、人生はきっと楽しい。

トロントへ行ったことで音楽の大切さを劇的に教えられた、という話ではありません。

むしろ一度音楽から離れてみて、

  • 「やっぱり自分はギターの音が好きなんだな」
  • 「ドラムやベースの音が好きなんだな」

という、とても単純なところに戻ってきた。

それで十分だったのだと思います。

好きなものと一緒に歳を重ねる。

今振り返ると、トロントで過ごした時間は、その始まりの一つだったのかもしれません。

私自身の音楽やバンド、トロントでの海外生活については、プロフィールにもまとめています。

プロフィール

トロントで過ごした15か月を一冊にしました

トロントでは、音楽以外にもさまざまな経験をしました。

ホームステイ、語学学校、レストランでの仕事、人との出会い、ニューヨークやナイアガラへの旅。

そして、日本で続けていたバンドが終わったあと、知らない土地で始まった新しい生活。

それらの記憶を一冊の本にまとめたのが、

『夢が終わったあと、トロントへ』です。

これは「海外へ行けば人生が変わる」という物語ではありません。

夢が一度終わったあと、それでも人生は普通に続いていく。

その途中で出会った人や街、音楽、旅の記憶を書いた本です。

Amazon Kindleで発売中です。

Kindle Unlimitedでも読むことができます。

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この本を出版した経緯や内容については、こちらの記事でも紹介しています。

25歳、バンドを解散してカナダへ行った。トロントで過ごした一年と数カ月を本にしました!

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