ダニエル・ピンク氏が書いた「ハイ・コンセプト」を大前研一さんが訳したことで有名な本です。
この本の初版は2006年ですが、この時に提唱したハイ・コンセプトと第四の波と言われた社会全体の流れはますます加速化していると思い、その先見性には驚くばかりです。
今の21世紀を生き抜くためのヒントと知恵が満載だったのでシェアします。
ハイ・コンセプトとは!?
「ハイ・コンセプト」とは、パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力などである。
そしてこれとセットで大切な概念として「ハイ・タッチ」があり...
「ハイ・タッチ」とは、他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力などである。
時代は急速に変わりつつあります。
・農業の時代(18世紀頃まで:農夫)
↓
・工業の時代(19世紀:工場労働者)
↓
・情報の時代(20世紀:ナレッジ・ワーカー)
↓
・コンセプトの時代(21世紀:創造する人、他人と共感できる人)
その時代によって求められるスキルも当然異なっており、いち早く新しい時代に対応する柔軟さが重要です。
今の仕事をこのまま続けて生き残れるのか?
「グローバル社会」と耳にタコができるほどに叫ばれてから数年が経過しますが、変化の速い現代を生きる上で3つの問いを真剣に考える必要があります。
1、他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか?
2、コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか?
3、自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか?
本書でも書いてありますが、中国やインドに台頭される人件費の安い国にどんどんと仕事は流れていきます。
そして、人口知能を兼ね備えたAIの学習能力の高さと速さも考慮しなければなりません。
はっきり言って耳の痛い話ですが、現状に目を背けていては明るい未来はないので、時代の変化には敏感になって対処するしかありません。
これから求められる「6つの感性(センス)」とは!?
「コンセプトの時代」には、左脳主導の考え方を、6つの不可欠な右脳主導の資質を鍛えることで補っていく必要があります。
1、機能だけでなく「デザイン」
商品やサービス、あるいは体験やライフスタイルにおいても、もはや単に機能的なだけでは不十分だ。
外観が美しく、感情に訴えかけてくるものを創ることは、今日、経済面において不可欠なことであり、個人のためにもなることである。
今は亡き、スティーブ・ジョブズが創業したアップル社の製品を考えると、いかに「デザイン性」が重要であり、それが成功のカギになっているかは周知の事実です。
2、議論よりは「物語」
情報とデータがあふれた今日の生活では、効果的な議論を戦わせるだけでは十分ではない。
必ず、誰かがどこかであなたの議論の盲点を突き、反論してくるからだ。
説得やコミュニケーション、自己理解に肝心なのは、「相手を納得させる話ができる能力」なのである。
偉大なアーティストや経営者などは、ストーリーテラーであり、その物語に人々は惹きつけられるのです。
3、個別よりも「全体の調和」
「産業の時代」と「情報化時代」の大半を通じて、何かに焦点を絞ったり、特化したりすることが重視されてきた。
だが、ホワイトカラーの仕事がアジアへ流出し、ソフトウェアに取って代わられるようになるにつれ、その対極にある資質に新たな価値が見出されるようになった。
それはバラバラなものをひとまとめにする能力で、私が「調和:シンフォニー」と呼んでいるものだ。
今日、最も重視されるのは、分析力ではなく総括力、つまり全体像を描き、バラバラなものをつなぎ合わせて印象的で新しい全体観を築き上げる能力である。
オーケストラの指揮者の仕事観から学びましょう。
4、論理ではなく「共感」
論理的思考力は、人間に備わった特徴の1つである。
だが、情報があふれ、高度な分析ツールのある世の中では、論理だけでは立ち行かない。
成功する人というのは、何が人々を動かしているかを理解し、人間関係を築き、他人を思いやる能力のある人である。
この領域は、機械やAIなどでは代用できない領域なので、鍛える価値は大いにあります。
5、まじめだけでなく「遊び心」
笑い、快活さ、娯楽、ユーモアが、健康面でも仕事面でも大きな恩恵をもたらすということは、数多くの例により証明されている。
もちろん、まじめにならなければならない時もある。
だが、あまり深刻になりすぎるのは、仕事にとっても、満足の行く人生を送るためにも、悪い影響を及ぼすことがある。
「コンセプトの時代」では、仕事にも人生にも遊びが必要なのだ。
「遊び心=無邪気さ」でもあり、子どものように好奇心をいつまでも持てる能力だと思います。
6、モノよりも「生きがい」
私たちは、驚くほど物質的に豊かな世界に住んでいる。
それによって、何億ものが人が日々の生活に苦しむことから解放され、より有意義な生きがい、すなわち目的、超越、精神の充足を追い求められるようになった。
生きがいと言うと少し堅苦しいですが、何をしている時に楽しさや充足感を感じるかを考えると、色々とヒントは見つかると思います。
感想!
2006年に書かれた本とは思えない程に現代の社会全体の流れを捉えた内容となっています。
本書を訳した大前研一さんが、「これからの日本人にとって必読の書である」と危惧していたのが手に取るようにわかる時代ですし、事実今現在もその流れは止まりません。
格差社会が広がる一方でどうしたら上に行けるのか。
3つのことを考えないといけないと言います。
1、「よその国、特に途上国にできること」は避ける。
2、「コンピュータやロボットにできること」は避ける。
3、「反復性のあること」も避ける。
ダニエル・ピンク氏が言ってることとほぼ同じです。
そして、会社ではなく、「突出した個人」が輝く時代であると2000年代の頃から言っています。
「モノからコト消費」や「シェアリングエコノミー」などの社会の流れも「共感・共有したい」という人間の欲求の現れかと思います。
ハイ・コンセプトとハイ・タッチの感性を磨き、突出した個人になることは現代社会を生きる上での命題だと思いました。